こんにちは。清水 誠です。まずは私が提唱する「コンセプトダイアグラム」について説明します。 コンセプトダイアグラムとは、顧客の心理変容と企業の施策を図解し、顧客の理解と施策の評価を行うメソッドです。
コンセプトダイアグラムはもともと、1990年代後半にUSのWebコンサルティング会社においてインフォメーションアーキテクト(IA)が標準的に活用していた方法論の一つです。コンセプトモデル、エクスペリエンスモデルなどの別称もあります。
私がScientやSapient、Razorfishに在籍していたころは他のプロジェクトの成果物をいろいろ見ることができる機会に恵まれました。しかりこれらはビジネスモデルに直結するため、納品物が世の中に出回ることはほとんどありません。そのため体系化が進まず、人やプロジェクトによって描き方が様々なまま、次第に忘れ去られていきました。
この手法を見直し、データによるビジネス評価や顧客理解、マーケティングやCRMのオートメーションにつなげやすくするためにアレンジした方法論を「コンセプトダイアグラム」として2008年から提唱しています。
これまでのウェブマーケティングは、企業主体でも通用するところがありました。しかし現在、「売りにくくなっている」と感じることも多いのではないでしょうか。つまり、どのような状態の訪問者に、どのタイミングで、どのようなコミュニケーションをすることが訪問者にとっても企業にとってもベストなのかを判断し、適切なチャネルで適切な内容のコミュニケーションをしていく必要があります。
……このような正論を主張するのは簡単ですし、「そんなことわかっている」「当たり前なので参考にならない」という方も、すでに多いと思います。これらの課題を感じているからこそ、もどかしさを感じている方も少なくないでしょう。
そこで、現実的で実践しやすいアドバイスとして、コミュニケーションのあり方を図解で整理することをオススメしています。
単に行動の変化を時系列でつなげるのではなく、企業が戦略に基づいてマーケティングによって狙う顧客の心理の変化を明確にしていくのがポイントです。ユーザー視点に立ち過ぎると、企業が伝えるべきメッセージや行うべき施策の洗い出しが難しくなり、その効果をデータで表現・検証することが難しくなってしまいます。
そのため、描く図はユーザーの実情ではありません。あくまで企業が望む顧客の変化と、それに対して企業はどうコミュニケーションすべきか、というコミュニケーションの戦略マップとして図解して整理します。
図解には以下のようなメリットがあります。
このような図解の方法論を「コンセプトダイアグラム」として体系化しています。このコンセプトダイアグラムはUX(ユーザーエクスペリエンス)ではなく、マーケティングの方法論として位置付けられます。
なお、類似手法に2012年頃から普及した「カスタマージャーニーマップ」がありますが、ユーザーとビジネスのバランスを重視し、コミュニケーション施策の洗い出しと位置づけ整理、データ活用につなげることを目的としている点が大きく異なります。
コンセプトダイアグラムでは、企業が望む顧客のゴール状態に到達するまでの過程を縦と横の軸を使って表現します。「獲得」「売上」「単価」といった企業視点ではなく、「こだわりの強さ」「危機意識」「自己理解」といった顧客視点の心理的な要因(結果ではない)を設定します。
ゴール到達につながる要因を分解すると、到達までの過程(シナリオ)を二次元で表現できるようになります。下だけに移動することもあれば、右だけに進むこともあります。途中で分岐することもあります。つまり、顧客の心理・態度変容のパターン化が可能になります。
そして、このような軸があるからこそ、起こすべき変化のデータ化や、訪問者の状態の特定、さらには、それらのデータに基づいたコミュニケーション設計や、実行、評価、オートメーションが可能になります。このようなデジタルマーケティングにおけるデータ活用のフレームワーク「カスタマーアナリティクス」も体系化を進めています。
このサイトは「コンセプトダイアグラム」と「カスタマーアナリティクス」の理解と実践を深めていただくために、解析対象として活用していきながら運営しています。各種セミナーに参加された方は実際のデータを見ながら参考にしていただけます。
Webビジネス歴23年。UXとIAの分野を開拓後、楽天やWebCrewなどの事業会社においてIT・UX・アナリティクス活用による改革を推進。2011年に渡米し、Adobe Analytics(SiteCatalyst)の企画・開発・啓蒙に携わる。2014年に帰国し独立。コンセプトダイアグラム提唱者。 執筆・セミナー多数。2008年文部科学省アドバイザー委員。2014年Web人賞受賞。