「コンセプトダイアグラム」の描き方(前編)

はい、ごめんください。コンセプトダイアグラム・エバンジェリストのコスギです。 コンセプトダイアグラムの描き方について、講座でも使っている手順をまとめましたので、参考にしてください。まずはステップへの落とし込み直前までの「前編」です。

「え、こんなに描き方を公開しても良いの?」って思いました?公開しちゃいます!!

というのも、コンセプトダイアグラムは「描き方を知っている」のと「描ける」のとはまったく異なるので、描き方そのものはどんどん知ってもらって構いません。むしろ、手順をマスターしておき、ファシリテーション(場の活性化)に注力することのほうが大切です。

というのも、コンセプトダイアグラムは「描き方を知っている」のと「描ける」のとはまった描いていて違和感を感じたら前のステップに戻ることも少なくありませんが、ステップごとに納得感をしっかりつくっていくと、戻りが少なくなります。この「納得感」はアハ体験に近く、「あ、ハマった!」という感覚を確認していくと良いでしょう。

①ゴールを決める

まず、目指したいゴールを定めます。企業視点では「売上100万円アップ」といった目標があるかもしれませんが、コンセプトダイアグラムでは企業のビジョンを顧客視点に変換して、成熟した顧客の状態を考えます。企業のビジョンが達成されたうえで売上目標が達成されたとき、顧客はどんなふうに喜んでいるのかを考えてみましょう


例)この「コンセプトダイアグラム」サイトの場合

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このサイトを例にすると、私(提供者)の立場としては「コンセプトダイアグラムが広まって、使ってくれる人が増えたら良いなあ」という思いを持っています。 それを対象者が成熟した状態の言葉に変換すると「やっぱり顧客視点のマーケティングをやっていこう」となります。今回は端的に「顧客視点の実践者」としました。


例)ダイエットの場合

今回はサンプルとして「エクササイズを中心に筋トレでリバウンドを解消するサービス」を想定してみます。ダイエットが成功したときの状態を考えると「10kg痩せた!」よりも「体が軽くて毎日運動するのが楽しい!」と表現したほうが、よりリアルです。この時の状態を端的に表現すると「もっと動きたい!」ですね。 こんなふうに、コンセプトダイアグラムで考えたい対象者が成熟した状態をゴールとします。わかりやすく端的な「ハマる」言葉で表現してみてください。だいたい8文字以内、長くても12文字が限度です。

②スタートを決める

次に、コンセプトダイアグラムで考えたい対象者の状態を考えます。私はこの時、対象者の葛藤を考えてもらっています。 葛藤、つまり「◯◯したい、けれど、◯◯したくない……」というテンプレです。商品やサービスは相手の欲求を満たしつつ、後半の「◯◯したくない」という本音を解決するものでなければ選ばれません。葛藤を考えると対象者の理解が深まりやすいですが、絶対に葛藤を考えなければならないということはないので、まずは対象者の心の声や欲求(◯◯したい)でも大丈夫です。


例)この「コンセプトダイアグラム」サイトの場合

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スタートに迷ったら、遠い方を選んだほうが良いのですが、サイト改善などの場合は近いところから設定して着実に改善を行なうのもアリです。 そんなわけで、このサイトを例にすると「コンセプトダイアグラムに興味を持っている人」を対象にして考えた場合、スタートは「コンセプトダイアグラムって何?気になる〜」とも考えることができ、端的に表すと「なんか良さそう」となります。サービス名を含める必要はありません。


例)ダイエットの場合

ダイエットの対象者にも色々ありますが、毎回リバウンドしてしまうような方を対象に想定してみました。これを葛藤のテンプレで考えると「痩せたい、けれど、いつも継続しない……」となります。端的に「どうせ続かない…」としてみましょう。

③ビジネスフローを洗い出す

①と②でゴールとスタートが決まったら、参加者それぞれが自分の認識をアウトプットするために、②(スタート)から①(ゴール)をつなぐフローを自由に書き出してもらいます。これを個人ワークとして行なうことが大切です。 すでに「対象者の言葉」になっているので、相手の視点や心の声でフローを書く方もいれば、ビジネスフローとしてカッチリしたものを書く方、自分の業務フローを書く方もいます。一方向ではなく、途中で分岐したり、離脱したりするフローを書く方もいます。 ここで書き出されたフローの正誤は問われませんが、「あまり書けないから怒られるかも……」なんて思う方も時々いらっしゃいます。もちろん具体的にアウトプットできるに越したことはありませんが、うまく書けない場合でも、それが現状の認識ですから問題ありません。文字で書き出すのが苦手な方は、簡単な絵でも良いのです。自分と他の人の認識は違うという前提があるからこそ、共通認識をつくっていくことが大切なのです。


例)ダイエットの場合

「どうせ続かない……」→「もっと動きたい!」のフローを思いつくまま書いてみました。

「どうせ続かない……」→ リバウンドするのは嫌だ → リバウンドしない方法があるのかな → ダイエットと筋トレは違うのかな → 筋トレもありかも → 筋肉の感覚とかわからない…! → うわめっちゃ筋肉痛! → うう……また地獄…… → ……あれ?前よりラク? → なんだか身体が軽いなあ → 身体の動かし方で筋肉痛が変わるんだ!→ 体型も変わってきた!→ 運動するのが楽しい! → 「もっと動きたい!」

といった感じです。この段階では、フローのステップを気にしなくても大丈夫。スタートとゴールに違和感がなく、流れも納得できればOKです。

④軸となる2つの要素を決める

ビジネスフローを見比べながら、それぞれ特徴的なキーワードをピックアップしていきます。ピックアップする際、以下を意識するとコンセプトダイアグラムを描きやすくなりますよ。

  1. 受動的なキーワード(顧客の「なるほど」を促す知識面のワード)
  2. 能動的なキーワード(顧客の「もっと〜したい!」を促す欲求面のワード)

③で書いたフローによっては、受動的なキーワードしか見つからないということもあるかもしれませんが、大丈夫です。コンセプトダイアグラムは一人で描くものではないからこそ、全員でフォローしあえるという長所を活かして、1人2個以上、キーワードを見つけてみましょう。 そうして最終的に、受動的・能動的なキーワードそれぞれ1つずつに集約して軸とします。2つの要素が深まることで、ゴールに到達できる軸を設定しましょう。片方だけだと、競合の商品やサービスが想定できるので、あくまでも両方の要素が揃ってゴールを実現できるのがポイントです。


例)この「コンセプトダイアグラム」サイトの場合

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清水さんと呑みながら10秒で考えた(笑)結果、シンプルに「なるほど」✕「もっとやりたい」を軸に据えました。 「なるほど」だけでは知識でしかなく、実践がなされていません。これだけなら巷の記事で十分です。「もっとやりたい」だけでは知識のアップデートが不十分で、適切なコンセプトダイアグラムの実践に至っていない可能性が高いです。実現したいゴールは「顧客視点の実践者」なので、コンセプトダイアグラムの「知識」と「実践」の両方を深めていくことを考えました。


例)ダイエットの場合

先ほどの流れから、キーワードをピックアップしてみましょう。

「どうせ続かない……」→ リバウンドするのは嫌だ → リバウンドしない方法があるのかな → ダイエットと筋トレは違うのかな → 筋トレもありかも → 筋肉の感覚とかわからない…! → うわめっちゃ筋肉痛! → うう……また地獄…… → ……あれ?前よりラク? → なんだか身体が軽いなあ → 身体の動かし方で筋肉痛が変わるんだ!→ 体型も変わってきた!→ 運動するのが楽しい! → 「もっと動きたい!」

  1. 受動的な知識系キーワード:筋肉の感覚、身体の動かし方
  2. 能動的な欲求系キーワード:筋トレもあり、前よりラク、運動が楽しい

こんな感じでキーワードを抽出できます。これらは「筋肉の知識」✕「運動したい」といった要素にまとめることができますね。当然、筋肉の知識だけ深まってもダイエットにはなりませんし、やみくもに運動してもリバウンドします。エクササイズによる適度な筋トレによって「もっと動きたい!」を実現するために、納得感のある軸になったのではないでしょうか。

⑤軸の深まりを確認する

コンセプトダイアグラムを描いたことがあるなら、「後半のステップが一足飛びでゴールに行ってしまうあるある」もご存知かもしれません。これを防ぐため、スタートからゴールの粒度をできるだけ均一に考えられるようにしておきましょう。 ④で考えた軸が、最高に深まった状態 → 最低の状態 → 中間の状態 という順序で、対象者の心の声を考えてみます。これも簡単に個人ワークをして、グループですり合わせると良いですよ。


例)この「コンセプトダイアグラム」サイトの場合

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  1. 「なるほど」軸(受動的・知識): 「これはいい!」→「ふーん…?」→「この手があったか」
  2. 「もっとやりたい」軸(能動的・欲求): 「解析もしたい!」→「とりあえず」→「こういうことか!」

MAXとMINを考えてから、中間を考えると粒度が均一になりやすいです。これくらいシンプルに考えてOKです。


例)ダイエットの場合

  1. 「筋肉の知識」軸(受動的・知識): 「次はこの筋肉だな!」→「感覚わからん…」→「筋肉痛キタ!」
  2. 「運動したい」軸(能動的・欲求): 「動かずにいられない!」→「だるい…」→「疲れにくい!」

フローを見直しながら、だいたいこの辺を中間に据えると良いかも?というアタリをつけて、認識をすり合わせていきましょう。

コンセプトダイアグラムの描き方・前編のまとめ

コンセプトダイアグラムの前半は以下の5つの手順で、軸までを表すことができます。紙の4つの角が埋まった状態ですね。

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  • ①ゴールを決める
  • ②スタートを決める
  • ③ビジネスフローを洗い出す
  • ④軸となる2つの要素を決める
  • ⑤軸の深まりを確認する

ここまでで「ハマった感じのある納得解」ができていれば良いのですが、違和感が残っていると、後半のステップへの落とし込みが難航します。時間がかかると参加者が疲れて妥協し始めてしまいますので、事前課題を活用しつつ、適宜休憩を取りながらがんばりましょう。


後編はこちらです!「コンセプトダイアグラム」の描き方(後編)




【この記事を書いた人】

小杉 聖

kosugi

1978年、新潟県南魚沼市生まれ、長岡市在住。 コンセプトダイアグラムエバンジェリスト。 心理学に基づいたコミュニケーション戦略立案、コンテンツ分析、SNSなども含めた幅広いウェブマーケティング、WordPressによるサイト構築が得意。 ウェブ活用の人材を育てる「ウェブ解析士認定講座」や関連セミナーを新潟県内で唯一定期開催。WACAアワードにて 2016年 Best of Best を受賞。 WordPressコミュニティの一員でもあり、毎月、無料の初心者向け勉強会を定期開催。ワークショップセミナー講師としても活動中。 夫と2人の子どもが大好き。

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